自家製レトルト食品を作ろう
2008年4月14日
家庭用真空パック機でパック詰めにした水を圧力鍋で加熱したが袋の溶着した部分が
パックリ裂けて空気が入っていた。袋から上がる蒸気はビニールくさかった。中に食品がはいっていたら食品がビニールくさくなっていたに違いない。真空パッ
ク用の袋はレトルト殺菌の温度まで耐えられないようだ。
使う圧力鍋の仕様は最高2気圧・120℃なので、パック詰めにした食品を30分〜60分のあいだ圧力鍋で加熱すればボツリヌス菌などの高温耐性菌を死滅さ
せられる。だが、袋が裂けて内容物が圧力鍋内に出てしまう。
圧力鍋は高温になると中の湯が沸騰して蓋の上にある錘の下から蒸気が出始める。錘の重さによって鍋内部の圧力、即ち温度が変わる。また、この錘で常に蒸気
を逃がすことによって鍋内部の圧力が一定に保たれる。ということは鍋の湯の温度は鍋内部の圧力に負けず気化できる少々高めの温度に常になっていることにな
る。
レトルト袋の内部の水分の温度がこの少々高めの温度まで上昇するとレトルト袋内の水分が沸騰し始めて袋を破裂させてしまう。
これを解決するためには
レトルト袋内の水分の温度を圧力鍋内の温度より少し低い温度に制御する。
− 食品の温度を120℃以上で殺菌をするので最高温度120℃の圧力鍋では無理。
− 加熱終了後の冷却時に鍋が先に冷えるので圧力鍋内の圧力が下がり始めるがレトルト袋内
の温度は遅れて下がるので結局レトルト袋が膨張するので無理。
レトルト袋外の圧力を高くしてレトルト袋内の水分の沸騰を抑える。
− 圧力鍋の圧力は湯の温度に依存しているので袋外の圧力を上げるということは
即ち温度を上げるということになり結局レトルト袋内の水分の温度も上がってしまうので無理。
レトルト袋を硬い金属容器で密閉する。
− レトルト袋が膨張しようとしても金属容器内の圧力も同時に上がるのでレトルト袋の膨張はある程度抑えられる。
− レトルト袋を密閉する金属容器が金属容器内の圧力で破裂するととんでもない事になる。
熱湯・水蒸気の飛散、圧力鍋
の破裂など人命にかかわる危険性がある。危なすぎる。
− 密閉構造の硬い金属容器はとても個人では製作できない。
いろいろ失敗や試行錯誤を繰り返す毎日であったが、アキバの東ラジをほっつき歩いていたらケース屋にいいものがあった。
防水防塵アルミダイキャストボックスである。大きさも15cmX10cmX5cmで小さめのレトルト袋であれば袋のミミを折り曲げて中に納まる。
しかし、アルミダイキャストボックスが圧力鍋のなかで破裂したらどうなるだろうか
と想像すると背筋が凍りついてくる。
圧力逃がし弁を付ければよいのだが、そんなもんアキバの店で売ってるはずもない。
同じケース屋でりん青銅の板を買い込んだ。板ばねにして圧力弁を作ることにした。弁はゴムシート、弁を抑える部分は真鍮の紡錘形のもの(模型屋で手回し
プーリーのハンドルとして売っていたものを加工)をりん青銅の板ばねで抑える。板ばねの強さで金属容器内と圧力鍋内の圧力差の最大値が決まる。沸騰直前の
湯に金属容器をつけてやっと弁が開いて弁からあぶくが出る程度にりん青銅の板ばねの強さを調整した。1/3気圧くらいで弁が開くといったところだろうか。
圧力逃がし弁があっても、弁や圧力
を逃がす穴に食品が詰まったり、レトルト袋で穴をふさいだりする可能性がありますので、とても危険です。絶対にまねしないでください。
マイクロコンピューターで電気ヒーターを制御するタイプの圧力鍋を使うことにし
た。ガスで加熱するタイプの圧力鍋は火力の微妙な制御が困難なので必要以上に加熱することによって鍋内部の温度や圧力の上下が激しくなり圧力逃がし弁付金
属容器で密閉してもレトルト袋の破裂は避けられないと思う。
道具はそろったので、実験開始
レトルト袋に入れた食品は何分加熱すれば120℃まで温度が上がるのか?
基準では食品の中心を最低でも120℃を4分間維持できればよいとされている。
早速厚さ2.5センチに切った大根のほぼ中心にサーミスタを刺し、水と一緒にレトルト袋にパックし圧力逃がし弁付金属容器で密閉し圧力鍋で加圧・加熱開始
である。
加熱開始からおよそ20分後に圧力鍋の圧力インジケータが上がった。
その10分後に圧力鍋の調理分数のカウントダウンが始まった。圧力鍋が規定の温度に達すると調理時間のカウントダウンを始めるらしい。
さて、大根の中心温度だが以下のように推移した。
開始 18℃
20分後 38.5℃(圧力インジケーター上がる)
25分後 57℃
30分後 78℃ (調理時間のカウントダウン始まる)
36分後 100℃
45分後 111℃
50分後 117℃
55分後 119℃
60分後 120℃
圧力鍋のスイッチオンから60分で、圧力鍋の表示で規定温度・圧力に上がってから
調理分数カウントダウン開始し30分で圧力逃がし弁付金属容器内の「水煮レトルト大根」の中心温度は120℃に達した。
食品によって規定温度に到達する時間は変わるので余裕を見てさらに30分程度継続して圧力鍋で加圧・加熱したほうがよい。スイッチオンから90分、調理時
間設定は60分は必要だ。
冷却
色が少し薄茶色になっているがいい感じで煮えてる。
サーミスタを抜くと
つづく(とても危険なので良い子は真似しないでね!)